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きゅうこんさんじゅうし
求婚三銃士
佐々木 邦
「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页
実は僕は父に来て貰いたかったんですけれど、忙しいと見えて、三月会議で上京するから、その辺のところを宜しく御理解願うようにと申して参りました」
富士子さんは手紙に目を通した。瀬戸君は両親からの返事を富士子さんに見せる約束だった。御機嫌取り専門にかゝっている。しかし一箇所具合の悪いところがあったから、インキで消した。それでも尚お墨書きの文字が透いて見えるから、更に墨で抹殺して置いた。相変らず用意周到だ。
「瀬戸さん」
「はあ」
「こゝのところはあなたがお消しになりましたの?」
「いや、父が消したんです」
「でも、インキと両方よ」
「然うですね」
「インキで消した上に墨が塗ってありますわ。あなたのお父さま、随分御念をお入れになる方ね」
と聡明な富士子さんは早速問題にした。
「ハッハヽヽ」
「何あに」
「矢っ張り頭脳明晰でいらっしゃいます。迚も敵いません」
瀬戸君は転向が速い。感づかれた上は強情を張るよりも冗談にしてしまう方が軽く済むと思ったのである。
「あなた?」
「ハッハヽヽ」
「何うも変だと思いましたわ」
「説明申上げます」
「宜いのよ、もう。何うせお消しになるくらいですから、本当のことは仰有いませんわ」