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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

と香川さんは憤る真似をした。二人は話し始めると長い。佳子さんは香川さんの親切に酬ゆる為め、縁談の進捗を詳しく打ち明けて、善後策を相談したのだった。

その翌日が丁度問題の吉川君の番に廻り合せた。佳子さんは平素に異るところなく、一晩機嫌よく応対した後、マントルピースの上から小筥を取って、

「吉川さん、これ皆安達さんのよ」

と言いながら、内容を示した。手帳、紙入、名刺入、受取証、映画の番組、電車の回数券等だった。しかし安達君のではない。安達君のポケットにありそうな品目を考えて、寄せ集めたのだった。

「何うしたんですか?」

「身体捜索をさせて戴きましたの」

「はゝあ?」

と吉川君は覚えず立ちかけた。

「未だお宜しいでしょう?」

「はあ」

「私の発案よ。でも、念の為めですから、父と母に一応目を通して戴きました。あなたも何う?」

「何ですか?」

「追剥のようで失礼ですが、ポケットの中のものを悉皆こゝへお出し下さい」

と佳子さんは初めは声が震えたけれど、もう凛然たるものだった。

「…………」

「私、疑うのじゃございませんけれど、いつか一度踏みたいと思っていた形式よ。安達さんにもお願いしたんですから、何うぞ悪しからず」