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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「何でも宜い。委せて置け」

と吉川君は円タクを呼び止めて、窓に捉りながら掛け合い始めた。安達君もこのまゝ別れるのは本懐でなかった。言い負かされたのは口惜しかったが、冗談にも腕力を翳して挨拶をさせたのは卑怯だった。狸穴まで同車する中に、もう少し何とか取繕いたいものだと思った。

円タクに乗り込むと間もなく、

「鳧がついてこれから何うなるんだろう?」

と瀬戸君が安達君に訊いた。

「三人対立さ。挨拶があったから、君の立場を認めてやるんだ」

「それも僕の方から言うことらしいが、まあ/\、この際だ。対立ってことにして貰う」

「競争は競争、友情は友情さ」

「それが本当だよ」

「正々堂々とやろう。負けても恨みっこなしに」

「うむ」

「何う転んでもお互は一生の親友だ。この為めに何だ彼だってことが起るような狭い料簡は持ちたくない」

「君はナカ/\分っているようだけれど、其方の大将はどうだい? 吉川君」

「競争は競争、友情は友情だ」

「成程」

「これは安達君にしては名言だろう? 又もってお互の金科玉条とするに足る」

「うむ。安達君よりも余っ程穏健だよ」

「何を言っていやがるんだい?」

と吉川君はまだ少し酔っているようだった。