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きゅうこんさんじゅうし
求婚三銃士
佐々木 邦
「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页
と奥さんは途上に注意する必要を認めた。
それから御主人大谷さんの出勤だった。
「おい/\、帽子がない」
「何うしたんでございましょう? あら、安達さんのがありますわ、間違えてお出になったのよ」
「成程。仕様のない男だ」
「無我夢中ね」
「心配だよ、これだから。失敗した場合が思いやられる」
「成功しますわ」
「しかし万一ってことがある」
「今日は申込みに上るんですから、ケチをおつけにならないで下さい」
「よし/\。巧くやって来ておくれ」
「行っていらっしゃい」
大谷夫人は早速お化粧に取りかゝった。外出の折は三十五を二十五に見せたいのだから、努力が大変だ。自信も強い。二三年前に矢張り仲人をして、初めの中何うも話がトンチンカンだと思っていたら、お婿さんが奥さんをお嫁さんと間違えたのだった。
「頓狂な人があるものね」
と、これを一種の功名談として末の世まで語り伝える積りらしい。大谷さんも奥さんがもう長いこといつも本当の年より十宛若いのに異存がない。女中が又よく調子を合せる。尤もその方が勤め好い。
「奥さま」
「何あに?」
「私、奥さまのお供をさせて戴きますと、肩身が広うございます」