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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
雷門以北「東京日日新聞 夕刊」1927(昭和2)年6月30日~7月16日<br>吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年2月<br>続吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年3月<br>隅田川両岸「中央公論」1935(昭和10)年9月<br>浅草田原町「三田文學」1912(明治45)年2月<br>あやめ団子「花形」1920(大正9)年8月<br>相模屋の路次・浅倉屋の路次「新演藝」1920(大正9)年8月<br>浅草の喰べもの「中央公論 夏期特別號」1920(大正9)年7月<br>夏と町々「時事新報 夕刊」1929(昭和4)年6月1日~30日<br>絵空事「新潮」1932(昭和7)年3月<br>一年「東京新聞」1946(昭和21)年4月15日<br>浅草よ、しずかに眠れ「苦樂」1948(昭和23)年2月<br>夜店ばなし「婦人公論」1931(昭和6)年7月<br>除夜「週刊朝日」1930(昭和5)年12月28日號<br>正月「婦人公論」1932(昭和7)年1月<br>水の匂「文藝春秋」1941(昭和16)年7月<br>町々…… 人々……「別冊文藝春秋」1955(昭和30)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 页
二
……おそらくそんなこと位に違いない……
と、そのとき、
「久保田!」
不意にそう呼ばれた奴である。――はっとしたって間に合わない……
二
が、優秀な成績をもった生徒は、感心な勉強家は、おくめんなくすぐ立上った。
「つぎを読みなさい。」
香取先生は敢然といった。
「…………」
勿論、わたしは、無言に立ちすくんだ。――読めといわれたってどこを読んでいいのか分らないのである。――わたしの持って立った本の、すくなくもいままでわたしのあけていた部分には、ことさらそんな読まなくッちゃァならない文章なんぞ存在しないのである。
わたしはわたしのうえに教室中の眼を感じた。――わたしはカッカした……
「出来ません。」
潔くわたしはいった。
「出来ない?」
それは、だが、香取先生にとって意外な返事らしかった。
「……出来ません。」
もう一度わたしは……だが、今度は、まえほど決していさぎよくなくいった。
「…………」
急にあたりのしんとしたのをわたしは感じた。――と、そのとき――そのときである……
「勉強せい!」
……わたしはすくみ上った。
というのが、これ、そこにいるのは始終一しょにいる仲間ばかりでないのである。