轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
貞之助が帰宅したのはそれから一時間ばかり後であったが、それまでピアノを鳴らしつづけていた彼女は、表のベルの音を聞くと玄関へ迎えに出、夫が書類入りの鞄を抱えて一往書斎へ這入るのを、追うようにして自分もあとから這入って行った。
「ちょっと! 折角あんさんに骨折って貰いましたけど、えらいことになってしまいましてんわ。―――」
今日話そうか明日にしようかと、さっきまで迷っていた彼女は、夫の顔を見た途端に黙っていられないようになったのであるが、それでも夫は、一瞬間さっと顔色を変えはしたものの、微かに溜息を洩らしただけで、そう不愉快を露骨に現わすこともなく、しまいまで物静かに聞いた。夫の落ち着いているのを見ると、幸子の方が又もう一度口惜しくて溜らなくなり、こんなに私等に心配させて置いて何と云う人だろうと、ついぞないことに雪子を激しく批難したりした。ほんとうに、今更云って見ても追っ付かないことだけれども、やっぱり橋寺氏には結婚の意志があったのである。口では煮え切らないことを云っていたけれども、内心は雪子ちゃんに気があったのに違いない。それなればこそ今日のような誘いをかけて来たのではないか。