轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
十二
「松濤アパートは?」
「夙川でない所にしたいけど、これから行って、今日のうちに極めて来るわ」
二人の姉が出て行ったあとで、妙子はひとり肘掛窓に腰掛けて晴れた晩秋の空を見上げていたが、いつの間にか彼女の頬にも涙が糸を引き始めていた。
十二
妙子が引き移ったアパートは、国道バスの本山村の停留場を北へ這入った所にある甲麓荘と云う家で、お春の話では、この間開業したばかりの新しい建物ではあるが、畑の中にぽつんと一軒建っている、まだ設備なども整っていない殺風景なアパートであると云うことであった。幸子は三日ばかり過ぎてから、昼飯にでも誘おうと思って、雪子と二人で神戸へ出て、電話を懸けて見たけれども、留守であった。お春に聞いても、朝早くでなければ大概お留守のようでございますと云った。それでも幸子は、そのうちに遣って来るであろうと心待ちにしていたが、幾日たっても妙子は姿を現わさず、電話一つ懸けて来るではなかった。
貞之助は、妻や雪子がほんとうに妙子と「絶縁」したものと信じたか、蔭で連絡があることは已むを得ないと諦めていたか、孰方とも分らないけれども、表面妙子を追い出したことで一往満足しているらしかった。