轻松读懂日语经典作品
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
十一
ながら面白がって笑いこけるので、いつ迄も止めなかった。が、今日はお春はあまり杯を強いられるので、程よいところで、
「熱いの持って来ましょう」
と、台所の方へ逃げて行った。彼女は塚田が、
「お春どんお春どん」
と、云いながら追って来るのを聞き捨てて、勝手口の土間へ降りて、裏庭の雑草の蔭に潜んだ。そして、黒繻子の帯の間からコンパクトを出して微醺を帯びた顔の白粉を直してから、あたりをそっと見廻して、誰もいないのを確かめると、出入りの雑貨屋の番頭に内証で貰ったエナメルのシガレットケースを開けて、光を一本取り出したが、大急ぎで半分吸うと、火を揉み消して、ケースに戻して、又庫裡の方へ帰って行った。
十一
姉は、廿六日にはどうしても立たなければと云って、昼間の播半のお呼ばれを済ますと、蘆屋へは帰らず、一時間ほど心斎橋筋の気分を味わってから、幸子たちに送られて真っ直ぐ梅田の駅へ行った。
「姉ちゃん、又当分来られへんやろなあ」
「それより幸子ちゃん東京へ来なさい。―――」
と、姉は三等室の窓から首を出して云った。彼女は、子供達がいては寝台を取っても寝られないし、二等も三等も同じことだからと、汽車を倹約したのであった。