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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

03 下巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页

青空文庫

三十三

隣りの寝台では雪子と妙子が、幼い折にしばしばそうしていたように互に背中を着け合って寝ていたが、ちょうど此方へ体を向けてすやすや眠っているらしい雪子の、ほんのりと白い寝顔を、どんな夢を見ているやらと思いながら幸子はいつ迄もまじまじと打ち眺めていた。

三十三

貞之助が妻の口から妙子の妊娠の件を打ち明けられたのは、彼女たちが東京から帰って来た夜のことであった。幸子は夫の顔を見ると、一刻も胸に収めて置くことが出来ず、(彼女は雪子には、既にその朝ホテルの部屋で、妙子が二三分いなかった隙に話してしまっていた)夕飯の食卓に就く前に、ちょっと! と夫に合図をして二階へ上って貰い、雪子の見合いの件から始めて妙子のことを一と思いにしゃべってしまったのであった。

「折角ええ話持って帰って、喜んで貰おう思うてましたのんに、………又こんなことで、心配かけるようになってしもて、………」

貞之助は、そう云って泣く幸子を宥めて、雪子ちゃんのおめでたい話がある矢先に、困ったことではあるけれども、まさかこのために縁談が駄目になりもしまい、何とか僕が始末をつけて上げる、そんなに気を揉むことはないから僕に任して置くがよい、と云い、二三日考えさせて貰おう、と、その日はそう云っただけであったが、数日後に幸子を書斎へ呼び入れて、次のような処置を取ったらどう