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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
一週間後には検便の結果も明かになったが、赤痢菌の中でも最も悪性な志賀菌が発見されたのであった。それに、どう云うものか今以て一日のうちに熱の差し退きが何回となくある。高い時は九度六分から四十度近くになり、激しい悪寒と戦慄が伴う。それは一つには、下痢を催すと下腹が痛んで苦しがるので、下痢止めを飲ませるせいなので、下痢を止めると身ぶるいが来て熱が上る。反対に通じをつけると熱は下るが、徒に腹が痛んで、出るものは水のようなものばかりなのである。病人は昨今めっきり元気がないようになり、医者も心臓が少し弱って来たようだと云っているので、雪子は気が気でなく、一体こんなことをしていて直るのだろうか、ただの赤痢ではないようにも見えるが、何か余病でも出たのではないか、と云い、そろそろリンゲルかヴィタカムフルの注射でもしてくれたらと、医者にそう云って見るのだけれども、まだそれには及びますまいと云って、してくれないのであると云う。こう云う時に櫛田さんならきっとジャンジャン注射してくれるのに、と雪子は云うのであるが、看護婦に聞くと、斎藤医師の父子は父親の老先生が注射ぎらいなので、若先生もその感化を受けて、余程の場合でなければ注射しないのであると云う。