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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
何しろ持っていれば金放れがよく、ぱっぱっと費消して、明日は忽ち素寒貧になると云う風なので、父子爵も、あれにはいくら金を遣っても無駄だと云っており、その点では頗る信用がないのだと云う。だから国嶋氏も云うのであるが、四十五歳にもなってアパート生活をし、無為徒食をしていることが何よりも宜しくない。それでは父子爵を始め世間が信用しないのも当然であるから、先ずこの辺で身を固めて、たとい僅かな額にもせよ、月給取にでも何にでもなって、自分の力で一定の収入を得ることである。そうすれば子爵も安心して、幾分のことはしてくれるであろう。但しそれも、もう度々のことであるから、真に「幾分のこと」でよいので、そんなに沢山出して貰う必要はない。私(国嶋氏)の見るところを以てすれば、御牧氏は気の利いた、洒落た住宅を設計させると、実に優れた天分を発揮する人で、将来住宅建築家として立派に立って行けると思うし、及ばずながら私も極力後援を惜しまないつもりである。ただ現在は時期が悪いために生活に窮しているのであって、それは一時のことであるから決して悲観することはない。そこで、私から父子爵に話をし、結婚の費用を持って貰うこと、新夫婦が住む家を買って貰うこと、ここ二三年間の生計を補助して貰うこと、この三つを承諾してくれるように説得しようと思うが、多分