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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
なあ姉ちゃん」
「まあ、あんたは黙ってなさい」
と、幸子は悦子を制しながら、
「あたしはこない思うねんわ。―――その御牧さん云う人はお公卿さんの子やさかいに、血統から云うたら京都人やし、東京は今のところ、アパート住まいしてはるだけやよってに、事に依ったら、関西に住みやはってもええのんと違うか知らん」
「ふん、そう云うことにならんもんでもないやろうな。もしわれわれで大阪あたりに就職口を見付けて上げれば、此方に住んでもええ云うことになるかも知れん。ま、少くともその人の体には、京都人の血が通うてることは確かやな」
「関西人云うても、京都人は大阪人と大分肌合が違いまっせ。京都の人は、女はええけど、男はあんまりええことあれへん」
「おい、おい、そうお前からケチを附けたらあかんやないか」
「そんでもその人、自分は東京生れかも知れへんし、仏蘭西や亜米利加に長い間いたはったのやったら、普通の京都人とは違いますやろうな」
「東京の土地は厭やけど、人は東京人の方がええことないか知らん」
と、雪子が云った。
井谷へ贈る記念品は、東京の送別会迄に極めればよいことになったので、今夜は取敢えず花束にでもしようかと貞之助が云い出して、そんな買物をするために、食事を済ますと五人は早めに神戸へ出た。