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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

03 下巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页

青空文庫

二十九

あった。

二十九

「失礼でございますが、蒔岡さんでいらっしゃいますか」

翌朝、三人が東京駅のプラットフォームへ降りた途端に、洋装の小柄な娘がチョコチョコと駈け寄って、幸子に絡み着くようにしながら声を掛けた。

「あたくし、光代でございますが、―――」

「ああ、井谷さんの、―――」

「どうも暫くでございました。―――母がお迎えに出ます筈なのですが、何や彼やと忙しいものでございますから、代理にあたくしが、………」

そう云って光代は、三人が持ち扱っている荷物に眼をつけて、

「赤帽を呼んで参りましょうか」

と、直ぐ又パタパタと駈けて行って、赤帽を掴まえて来た。

「ああ、雪子お嬢さんにこいさんでいらっしゃいますね。あたくし光代でございます。ほんとうにまあ、何年ぶりでございましょう、母がいつもいつも御厄介になっておりまして、………それに今度はお三人お揃いでわざわざお出まし下さいまして、ほんとうに痛み入りますわ。昨夜も母がそのことを申しまして大変な喜びようでございまして、………」

そして、大きい物を赤帽に預けたあとで、風呂敷包やら化粧鞄やらコマコマした物がまだ二つ三つ残っているのを、