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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
て来た。貞之助はそれにつけても、渋谷の義兄から未だに返事が来ないのが気に懸ったが、本家の態度が妙にはっきりしないのは、雪子の件で義兄が矢張面白くなく思っていることもあり、外にも理由があるかも知れないと察せられたので、或る日此方から辰雄に宛てて次のような趣旨の書面を出して見た。―――今回の縁談については姉上から詳細お聴き取りのことであろうが、小生も決してこれを最上のものと申すのではない。しかし当方にも余り多くを望み得ない弱味があることを考え、国嶋氏の言に信頼して、ここいらで纏めるより外はないかと存ずるのである。それで先日電話でお断りして置いた通り、去る八日御牧家の招きに応じて広親子との顔合せを済ませ、近々結納と云うところまで運んだのであるが、本家を差措き、小生等夫婦の計らいを以て話を進めてしまったことについて、或は気持を悪くしておられるのではないかと思う。それにつき、今更遅蒔ではあるが、小生としてお詑びしなければならないのは、昨年以来、いや、実はそのずっと前から、雪子ちゃんを本家へ返すようにと云う度々のお言葉があったにも拘らず、遂にそれを実行し得ずして今日に至ったことである。