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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
貞之助は、どうもこの話は少しおかしい、と、翌日事務所から帰宅するとそう云ったが、彼はその日心あたりの方面へ二三問い合せて、沢崎家の当主のことを聞けるだけ聞いて来たのであった。そして、当主と云うのは早稲田の商科出の本年四十四五歳ぐらいの男であること、彼が妻を亡くしたのは二三年前のことであり、その妻は某堂上華族の出であったこと、亡妻との間に二人か三人子供がある筈であること、貴族院議員をしていたのは当主の父親であるが、資産状態は今も決して悪くはなく、先ず名古屋附近で屈指の富豪の中に数えられるであろうこと、―――等々は大体分ったけれども、当主の人物や性行など、細かいことに就いては誰もはっきりした返事をしてくれなかった、と云い、何にしても華族と縁組をするくらいな千万長者が、二度目とは云いながら、没落した蒔岡家の娘を貰ってもよいと思っていると云うことが、腑に落ちない、それが本当とすれば、何か知ら先方に対等の縁組が出来ないような欠点があるのかと思えるけれども、まさか菅野の未亡人がそんな所へ雪子ちゃんを世話する積りでもあるまい、と云うのであった。それで、考えられることは、矢張器量好みと云うようなこと、―――純日本式の、昔の箱入娘風の感じの人をと云う注文で、金に飽かして捜さしていたところへ、たまたま雪子のことを聞き、では