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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
ていた。
「どれどれ、うちがしたげよう」
ブリキの缶がつるつる滑って、悦子では巧く括れないので、妙子が自分の膝へ取ったが、ガーゼの中の蛍は、昼間でも暗い蔭に置かれると青く光っているのが見えた。妙子はガーゼの隙間から中を覗いていたが、
「あ、悦ちゃん、ちょっと見て御覧。―――」
と、又その缶を悦子の方へ差出しながら、
「―――何や知らん、蛍でないもんが沢山這入ってるらしい。………」
悦子も中を覗いて見て、
「蜘蛛やわ、こいちゃん」
「ほんに。………」
そう云っているうちに、米粒ほどな小さい可愛らしい蜘蛛が蛍のあとからぞろぞろつながって這い出して来た。
「あ、大変々々」
妙子が缶を腰掛に放り出して立ち上ると、悦子も立ち上り、幸子も雪子も眼を覚ました。
「何やねん、こいさん」
「蜘蛛々々、………」
小さい蜘蛛に交って物凄く大きいのも這い出して来たので、とうとう四人総立ちになった。
「こいさん、その缶何処ぞへ放下しなさい」
妙子が缶を摘み上げて床に投げ出すと、それに驚いたのか、蝗が一匹飛び出した。そして床の上をピョンピョン跳ねながら、通路の向うの端まで飛んで行った。
「ああ惜しいわ、あの蛍、………」