轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
でも、箕面の方に移ってからは、もうそう長くないことが分ったので、前よりは頻繁に見舞いに行くことを許されたが、臨終の日は朝早く電話が懸って来、幸子達が駈け付けると間もなく息を引き取ったのであった。それは、その数日前から降りつづいた秋雨がなおも降り止まず、瀟々と病室の縁側の硝子障子に打ち煙っている日であった。障子の外にはささやかな庭があって、そこからだらだらと渓川の縁へ下りられるようになっており、庭からその崖へかけて咲いている萩がもう散りかかってしたたか雨に打たれていた。渓流の水嵩が増したために山津浪がありはしないかと村の人々が騒いでいるような朝のことで、雨の音よりも凄じい流れの音が耳を聾するように聞え、時々川床の石と石と打つかるたびに、どどん、と云う地響きが家を揺するので、幸子達は水が上って来たらどうしようかと怯えながら、母の枕もとに侍っていたのであったが、そう云う中で白露が消えるように死んで行く母の、いかにもしずかな、雑念のない顔を見ると、恐いことも忘れられて、すうっとした、洗い浄められたような感情に惹き入れられた。それは悲しみには違いなかったが、一つの美しいものが地上から去って行くのを惜しむような、云わば個人的関係を離れた、一方に音楽的な快さを伴う悲しみであった。