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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

03 下巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页

青空文庫

九

の斡旋は専らわれわれが勤めなければなるまいから、そのつもりで、―――と、めったに電話を懸けて来ない姉であるが、懸けると長話の癖を出して、もう一通話もう一通話と継ぎ足しながら、雪子ちゃんやこいさんにも出て貰うけれども、二人ながらまだああしているのが寔に工合が悪い、と云うようなことから、親類の人々に持って行く土産物の相談まで始めるので、幸子の方から、

「そんなら、明後日、―――」

と、好い加減なところで切り上げたのであった。

九

幸子は、姉が電話口で最後にちょっと洩らしたこと、―――雪子や妙子にも出席して貰うとして、まだ売れ口の極まらない二人を多くの人々の前に曝すのが、姉の身として辛いと云うこと、―――それは恐らくは姉ばかりでなく、義兄としても余程胸に痞えているに違いなく、邪推をすればそんなことなども、義兄が法事を億劫がる理由の一つになっているのかも知れないと思えた。義兄夫婦にして見れば、せめて雪子一人だけでも、今年の年忌までに身を固めていて欲しかったであろう。三十三と云う年になって、今も人々から「娘ちゃん娘ちゃん」と呼ばれる雪子、―――年下の従妹達などが大概もう奥さんになって、中には子供まで連れて来るのがあるのに、今もなお恰好な縁が見付からない雪子、―――昭和六年の父の七回忌の時、彼女が二十五の折にも、人々が彼女