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じゆうじん
自由人
豊島 与志雄
「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页
抑制しきれなくなると、大声に怒鳴りつけはしないが、手当り次第に物を放りだす。注射器を壊したこともある。コップを砕いたこともある。土壜をひっくり返したこともある。そのあとでは、自分も不愉快になるとみえて、むっつりと黙りこんでしまうのだ。――それから、額や頭によく汗をかいた。たいてい食事や晩酌の時で、頭から仄かに湯気を立てることがある。――いったいに物ぐさとなり、投げやりになり、富子夫人に万事を一任した風が見えだした。社交上のことや、金銭上のことまで、相談してもただ聞き流して、黙殺してしまうことが多い。
そのような富子の話も、いつもの調子で、小鳥のようにあちこちへ転々して、全体としてはなんだか要領を得ないものになってくる。体は小柄であるが、鼻がつんと高く、きりっと取り繕ってる様子には、他からの窺※(「穴かんむり/兪」、第4水準2-83-17)を許さぬ趣きがあった。
「それから、気になることがありますのよ。はたから何やかや言われるのを煩さがり、独りで静かにしていたい様子ですが、そのままそっとしておきますと、淋しくなるらしいんです。用もないのにみよやを呼びつけたり、うちの誰はどうしているか、彼はどうしているかと、別にそれが気にかかるわけもありませんのに、いろいろ尋ねます。