轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
きくやしき
菊屋敷
山本 周五郎
「菊屋敷」産報文庫、大日本雄辯會講談社、1945(昭和20)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,620 字 · 71 页
しか与えて呉れなかった有らゆるものが、すべてが跡方もなく拭い去られてしまうのだ。
「それはあんまりだ、あんまりですよ小松、だからわたしは初めに云ったではないか、呉れてしまって大丈夫ですか、あとで悔みはしないかって、……あなたはあのときあれほどきっぱり約束したでしょう、晋吾さんもお萱もちゃんと聞いていました、それなのに今になって、わたしがこんなに晋太郎を失ないたくない今になって、あなたは酷すぎます、あんまりです小松」
ずいぶん更けるまで、志保は妹を眼の前に見るような気持でかきくどいた。そんなことは志保には似合しくない、そんなにみじめにとりみだすのは志保の性質にはないことだ、返したくなければ「返さない」と云うべきである、そしてこれまでの志保ならそう云った筈なのだ、それがそう云いきれず、そのように哀しくかきくどくのは「返さずに置きたい」というみれんがあるからだった。悲しむだけ悲しみ、怨むだけ怨んで、やがて志保はその「みれんな気持」ということに気がついた。晋太郎を返せという妹のねがいが母親の無条理な愛なら、ただ返したくないという、感情にひきずられる自分の気持も無条理である、どちらも自分の愛、自分の感情に囚われているだけで、晋太郎というものをまるで考えていない、――それでよいのか、志保はそこに思い到って、はじめて自分