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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
と云って見た。
「いいえ」と女の答えた頃には、純一はまずい、sentimental な事を言ったように感じて、後悔している。「おやかましかったでしょう」と、女が反問した。
「なに。好く寐られた」と、純一は努めて無造做に云った。
障子の外では、がらがらと雨戸を繰り明ける音がし出した。女は丁度火を活けてしまって、火鉢の縁を拭いていたが、その手を停めて云った。
「あのお雑煮を上がりますでしょうね」
「ああ、そうか。元日だったな。そんなら顔でも洗って来よう」
純一は楊枝を使って顔を洗う間、綺麗な女中の事を思っていた。あの女はどこか柔かみのある、気に入った女だ。立つ時、特別に心附けを遣ろうかしら。いや、廃そう。そうしては、なんだか意味があるようで可笑しい。こんな事を思ったのである。
部屋に返るとき、入口で逢ったのは並の女中であった。夜具を片附けてくれたのであろう。
雑煮のお給仕も並のであった。その女中に九時八分の急行に間に合うように、国府津へ行くのだと云って勘定を言い附けると、仰山らしく驚いて、「あら、それでは御養生にもなんにもなりませんわ」と云った。
「でも己より早く帰った人もあるじゃないか」