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せいねん

青年

森 鴎外

「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页

青空文庫

八

現代人であります。新しい人であります」

拊石はこう云ってしまって、聴衆は結論だかなんだか分らずにいるうちに、ぶらりとテエブルを離れて前に据わっていた座布団の上に戻った。

あちこちに拍手するものがあったが、はたが応ぜないので、すぐに止んでしまった。多数は演説が止んでもじっと考えている。一座は非常に静かである。

幹事が閉会を告げた。

下女が鰻飯の丼を運び出す。方々で話声はちらほら聞えて来るが、その話もしめやかである。自分自分で考えることを考えているらしい。縛がまだ解けないのである。

幹事が拊石を送り出すを相図に、会員はそろそろ帰り始めた。

八

純一が梯子段の処に立っていると、瀬戸が忙しそうに傍へ来て問うのである。

「君、もうすぐに帰るか」

「帰る」

「それじゃあ、僕は寄って行く処があるから、失敬するよ」

門口で別れて、瀬戸は神田の方へ行く。倶楽部へ来たときから、一しょに話していた男が、跡から足を早めて追っ駈けて行った。

純一が小川町の方へ一人で歩き出すと、背後を大股に靴で歩いて来る人のあるのに気が附いた。振り返って見れば、さっき大村という名刺をくれた医科の学生であった。