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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

すると、熔解作業だけがフキということになるわけだが、熔解した「湯」を鋳型にそそいで鋳物をつくる、その全体の作業をフキと言っていた。今でもそう言っているようだ。

このフキには材料代、燃料代をはじめとして相当の金がかかる。俺のおやじは道楽者の上、宵越しの金は持たねえ式の職人気質だったから、はいるとパッと使っていつもピーピーしていて、フキの場合はその費用を、できた鋳物を納める問屋から前借するのが常だった。前借のまた前借といったふうで、そうなると、納入品の値段も叩かれ放題で、汗みどろの仕事も工賃稼ぎにひとしい金しか手にはいらなかった。

そのくせ、工場の者を連れて派手に飲み歩くことが好きで、朝帰りには、よくウマが家までついてきた。俺は死んだおふくろが、びんの毛を手で掻きあげながら、そっと質屋へ飛んで行く姿を、幾度見たか分らない。

世帯の苦労に女の苦労、あらゆる苦労のしずくめで、おふくろは死んで行った。しかもその死に際に、おふくろは、

「おとっつぁん、ごめんなさい」

と、自分がさもさも至らなかったみたいに、おやじに詫びた。いまいましいったら、ありやしない。

おやじは男泣きに泣いていたが、