轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
またもや俺はパンを放りあげた。前より手前に落ちるようにした。警戒心の強い犬は、俺に近づくのを恐れて、口で受けることをしなかった。
「なんて臆病な奴だ」
俺はパンを投げつづけた。投げる距離を徐々に縮めて、犬を俺の傍にひきよせて見ようと試みた。
それは成功した。ごく近くまで犬が来るようになった。それでも俺に心を許さない様子がありありと見える。それがぐっと俺のカンにさわった。
「不愉快な奴だ」
突然、俺の頭に殺意が閃いた。
「このオオチョボ(犬)をぶっ殺してやれ」
俺はピストルを取り出した。犬はおったまげて飛びのいた。俺の殺意が犬にぴーんと来たのか。
「おい、これ、やるぞ」
俺はパンをついそこに投げた。
おどかしちゃ、いやですよ、そう言っているような卑屈な頭のさげ方で、犬はパンに近づいた。俺はピストルを腰に当て、左手にパンを持って、
「ほれ……」
手を差しのべて犬をおびき寄せた。犬は初めて尻尾を振って、俺の手に口を向けて来た。今になって尻尾を振ってやがる。ちょっと俺はためらった。
だが、俺の指はすでに曳きがねをひいていた。心臓をねらって――いや、俺は犬の心臓がどこにあるのか知らないが、前足のうしろあたりが、げっそりと凹んだ腹とちがって、命中率がいいと見たのだ。