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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
その二 支那浪人
「あの子はチャメでいいんだけど、うまくあいてるかしらねえ」
砂馬は俺に会心の笑みを送って、仲居に言った。
「みんな、ひとつ部屋に寝るんだ。みんな一緒に寝るんだ」
へーえと仲居は眼を丸めて、
「物好きな方がいらっしゃるもんですね。お客さまのほうでもお二人一緒――は珍しいですね」
「客が一人で芸者が複数は珍しかない?」
「それだって、珍しいですけど」
と仲居は言ったが、それはそういう遊びがここで行われていることを告げる。
「もっと珍しいから、もっと芸者も面白がるだろう」
「案外、そうかもしれませんね」
と仲居が相槌を打つのを俺は見た。安淫売も許さなかったことを、そして女郎屋でもことわられたことを、芸者のほうがかえって「面白がる」とは……。いずれはマクラ専門のユキダルマに相違ないが、それにしても、
「面白いもんだな」
と俺は呟いて、
「だが、俺はおりる。俺は帰ろう」
待て、待てと手をのばす砂馬に俺は言った。
「興味がなくなっちゃった」
「そこが加柴のいけないところだ」
「いけなくても勘弁してくれ」
俺はクララのところへ飛んで行ったのである。
その二 支那浪人
俺はクララにすっかり夢中になった。