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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

めまいは俺をその場にへたへたとしゃがみこませた。醜態だった。

左様、めまいと言えば、俺が風呂からあがって、煙草をすったときも、ふたたび、くらくらっとした。すっかり煙草のけがきれていたのだ。喫煙厳禁の留置場でも、こっそりモクを持ちこむ奴があって、看守の眼を盗んでたまに一服していたのだが、シャバ並みのすい方ではなかった。人並みにすったら、くらくらっとめまいがした。

肉体的なめまい――そのくらくらっとした感じは錯乱に似ている。錯乱に似た精神的なめまいといったものもあるはずだ。俺が十月事件などに参加したのは、ひょっとするとそれだったのかもしれない。ひとり角力をやっていて、精神的なめまいともいうべき錯乱に陥ったのではないか。

だが、ほんとの錯乱――精神がくらくらっとなるめまいは、これからあとのことだった。それに間もなく俺は襲われたのである。

丸万に会わねばならないのだったが、会わす顔がない。慷堂にも会いたいのだったがこれも何か行く気がしなかった。

俺が一番会いたいのは波子だった。しかし会う前に、俺としては自分の気持をはっきりさせておかねばならぬ。もたもたしているところへ、