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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
ひと休みしたら、どうだ、俺と一緒に仕事をしないか」
「軍の派閥争いからは手をひいたほうがいい……?」
俺はまだ矢萩に眼を据えたまま、
「仕事ってのはどういう……? 人殺し? 人殺しの仕事?」
「なんだ、その科白は?」
と砂馬が怒声を発した。
「俺も人が殺したいね」
「加柴!」
と叫んだ砂馬に、矢萩は静かにその顔を向けた。喋ったな? 光った眼にそう言わせていた。
砂馬はきっと猪沢を見て、
「加柴と二人でなんの話をしてたんです」
猪沢が喋ったのではないかと暗に砂馬はそう言っていた。
「人殺しの話なんかしやしねえ」
下唇を突き出すようにしたその猪沢の口もとが、どこか照子に似ていた。照子が思い出されて俺は不愉快だった。不愉快な語調で俺は言った。
「砂馬さんは俺が猪沢さんの娘をどうかしたみたいに言ったようだな。いやだねえ」
「猪沢君の娘……?」
と矢萩が聞き返した。
「加柴の奴、見さかいなく喋り立てる……」
砂馬にたしなめられて俺は、
「人が殺したいねえ」
ヤケな声で言った。
「尾垣をやれ!」
矢萩が命令調で言った。俺はカチンと来た。知らないこの男に命令されることはない。
「あんた、やったら」