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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

「砂馬慷一だって純正アナーキストからリャク屋になり、今度は支那浪人……」

「砂馬さんは何かでっかいことを考えてるようだが」

庇うように言って、

「支那を食いものにしている奴らを、向うで見て来たのが、まずかったかな」

「丸さんとは、事が破れたら馬賊になろうと約束したが」

俺は頭をさげて、ベカをつけた。

「あの暴動計画もああたあいなくポシャろうとは思わなかった」

「あれはモノになるまいと睨んでたよ。話がうますぎる……」

陶製の小さな、可愛いみたいなテライレ(火鉢)に、丸万は炭をつぎながら、

「満州行きはやめか。クロポトキンの『相互扶助論』に出てくる北満の動物、あれにお目にかかれると思ったのになあ。北満の苛烈な自然のなかでお互いに助け合いながら生きてる動物……」

「俺たちみたいだな。クロポトキンとはなつかしい名が出てきた」

「なつかしい?」

それほどもうアナーキズムから遠ざかっているのか。アナーキズムを捨てたのか。そういった丸万の声に、

「北満じゃないが、俺は北の果てに行く……」

「どこへ行くんだ」

「――人をネムらせちゃったんだ」

丸万だけには正直にウタって(白状して)おこう。