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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

身体を抱かせることなどは単なる商売にすぎない。

いま俺は、俺をあんなに喜ばせたクララとの接吻が俺に、なんとも言えない切ないおもいを与えるのを感じねばならないのだった。それほど、俺はクララに惚れてしまったのだ。そのための切なさが、つい俺に、

「他の客にもクララはキッスをさせるのかい」

と言わせた。

「馬鹿ねえ」

とクララは言って、今度は自分から唇を寄せてきた。

「クララ」

「照子と呼んで。照子があたいの本名……」

「え?」

俺はこの女が、あたいと言ったことにも、え? と言っていた。

「照子」

「四郎さん」

とクララは言った。俺はもう一度、

「え?」

と言った。どうして俺の名を知っているのだろう。

「この間、名刺をくれたじゃないの」

「名刺を?」

俺は名刺なんか持ったことはない。土台、名刺など作ったことはない。でも俺は、そうは言わないで、名刺を渡した覚えはないがと言うと、

「そいじゃ、兄さんに来た葉書を見たのかしら」

せっかくの気分がこわれたと俺に感じさせる声だった。

「ポケットから兄さんが出したとき、あたしの眼にはいったのかしら」

また、あたしに戻して、

「さ、おトコつけましょうか」