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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
「あのままだ」
事もなげに彼は言った。どんなに雪が深くなろうと、放しっぱなしだと言う。雪に埋れて死にはしないか。
「死ぬやつは死ぬさ」
「死なねえ奴は死なねえか」
ヤケみたいに俺が言うと、金原は、そうさとあっさり言って、そしてこんな話をした。あの道産子の先祖は北海道がエゾと呼ばれていた頃、アイヌと交易するため本州から船で北海道へやってきた「和人」が使役用に連れて来た馬である。その馬に荷を積んで、奥地へはいってアイヌと物々交換をして、冬近くになると港へおりてくる。そしてエゾから引き揚げるに当って、荷が多すぎたとき、彼らは使役馬を置き去りにして自分たちだけ船に乗った。雪のなかに捨てられた馬の群は、それこそ「死ぬ奴は死んで」強い馬だけが生き残った。必死に生きのびたその子孫が今の道産子で、
「もともとは南部馬なんだから、あんなになりが貧弱だったわけじゃない。艱難辛苦の末に、今みたいに小さくなっちまったんだ。だから、よく見ると内地の馬とちがって、みばは悪いが、がっちりした体つきをしているよ」
俺は黙って下唇を噛んで――つい歯に力がはいりすぎて、痛えと放したりして、金原の話を聞いていた。