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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

東京へ行くんだという昂奮が俺の欲情をもたかぶらせたのか。俺は波子のうしろからやにわにスカートに手を忍ばせた。運動会の女の子がはくような黒いキャルマタ(と俺はふざけて呼んでいた)に手がとどいたとき、

「あら、こんなところに……」

と波子が押入れからお手玉を出して来た。女工の寄宿舎に初めはいったときに見つけた「アヤコ」である。

「取ってあったのか」

どこかへ紛れこんでたのよと、ごまかすように波子は言って、

「縁起がいいから持ってこう」

「なんだって」

「いいのよ」

「おい、波子」

気を散らされた感じの俺は露骨な言葉をささやいた。

「しょうがない人ねえ」

あんなにあたしをせき立てておいてと、押入れの上段に手をかけた。蒲団なんかいらねえから、障子をしめろと俺は言った。

部屋を密閉するが早いか、波子を俺は畳の上にすっ倒し、スカートをまくった。強姦の真似みたいな所業を俺は欲していた。

おやじが死ぬ――それが俺を凶暴にしているのだと、そう思うことを俺は欲していた。女房をいつかのおいらんみたいに扱うことを俺は恥じなかった。乱暴な――と波子は言いながら、されるままになっていた。顔にかかった髪をかきあげて、荒い息をしている。