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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
いたましさなど吹っ飛ばして、俺を呑気な気持にさせたのだ。
そうした俺が四・五・六のロクには、ハッタリで呑気ぶっていると見えたらしく、いよいよもって気を悪くしたふうだった。むっつりと黙りこくっているその背に、にがにがしさを漲らせていた。
南京路を行く車が、競馬場をすぎて、静安寺路のプール横にさしかかった。すると、いきなり、キキキーと急停車して、前の車にあやうく追突するところだった。胆を冷やした俺は、つんのめった身体をおこそうとしたとき、すさまじいピストルの音にふたたび驚かせられた。
「畜生!」
と叫んだ丸万は、矢萩一派に襲われたとでも思ったのか、肥った身体に似合わぬ素速さで、するりとその上体をすべらせて座席の下に身を隠した。あっという間の早業だった。ロクもあわてふためいて、運転台の下にもぐっていた。
襲われたのは二三台前の自動車だった。中国人が二人、その車をめがけてピストルを打っている。それも車の前に堂々と立ちはだかって、車のなかにタマをぶちこんでいる。
まるで俺の度胸試しに仕組まれた芝居みたいな感じで、俺はぽかんとしていた。すさまじいピストルの音も何か非現実的な感じだった。