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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

その肩さきを兵隊が上から手をのばして掴んだ。

こうして穴から引きずりあげられた男は、途端に、おとなしくなった。虚脱とはちがう神妙さだ。どういうわけか、別人のような潔さになって、

「殺! 殺!」

とクビをのばしていた。

「この※(「にんべん+欠」の「人」に代えて「小」、第3水準1-14-13)公は自分にやらせてくれ」

と俺は曹長に言った。

馬鹿言うなと一喝されたが、俺は、

「頼むから、やらせてくれ」

と食いさがった。シロートにクビは切れないとも言われたが、あくまで俺は頑張った。

しまいに曹長も、根負けしたみたいに、

「じゃ、やってみろ」

「ありがてえ」

と俺は言った。

一体全体これはどういうことだったのか。俺はこのときすでに気が変になっていたのか。

まだ俺はこのときは正気だった。でも、志奈子、丸万、百成の死を聞いて、俺はたしかに逆上はしていた。しかし逆上だけでこんなことができたとは思えない。

砂馬を殺せなかった腹癒せに、こんなことをしようとしたのか。砂馬の埋めあわせだったら、砂馬と同じ日本人をバラしたらいいんで、何も中国人を殺そうとしなくてもいい。

死んだ慷堂は俺が張継に似ていると言った。