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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
そいつを、しこたま――ほんとは、静脈注射のザルソブロカノン(なんてむずかしい薬名を知っているのは、俺が肺をやられたとき、それの世話になったからだが、これは後日の話――)ぐらいの量だったけど、実感としては、しこたま、俺のヨシコにつぎこむと、医者が、
「はい、おさえて」
と俺に言う。
そこで俺は、てめえのヨシコのさきを、てめえの指でおさえるのである。ヨシコのなかにつぎこまれた液体が、そのままでは当然すぐ出てしまう、というより液体自身がいわば居づらくて、飛び出したがるみたいなのを防ぐために、自分の指でおさえるのである。ヒリヒリするのを我慢して、若い医者から、はい、もうよろしいと言われるまで、一定の時間おさえているのである。
金をぼる代りに、お客さまへのサービスも大事にしている花柳病専門の医院だったら、人の眼から隔離した小部屋が用意されているだろうが、ここはそうはいかない。ヨシコのさきをおさえる道具も、そうした医院なら、ちゃんとあるだろうが、ここにはない。人には背を向けているとはいえ、その背が丸見えの診療室の隅で、妙なところを自分の手でつまんで、壁を睨んでいるその恰好は、全く見られたざまじゃない。