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ちょうさきかん
中井正一評論集
中井 正一
中井正一『中井正一評論集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:調査機関、図書館に生きる道、図書館の未来像、二十世紀の頂における図書館の意味、脱出と回帰、探偵小説の芸術性、芸術の人間学的考察、美学入門、絵画の不安、スポーツの美的要素。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,229 字 · 256 页
つまり深く切実なせつなさをもって物に対決するこころが、公卿の階級から失われていった場合、すでに武士の世界では、命と命との真剣勝負の食うか食われるかのせっぱつまった世界が現われている。そしてその人たちがその時代の文化をささえはじめるのである。この時代において、自分がより新しく自分から脱出するということは、切って捨てるような感じでもって、自分自身を捨て去ることが、この生活の基準となり、また芸術の調子ともなるのである。さきにのべた能の太鼓の調子のように、時間や空間を切って捨てる「間」の中にある美しさが実にそれである。つまりそれは、おたがいに切り結びあうことをもってのみ、存在しうるという時代の、一つの大きな特徴となってくるのである。新しくなるということは、この時代の人々にとっては自分が、自分を切り捨てることであって、この切断する感じ、これがこの時代の美の、大きな要素となるのである。
能の世界で、おしつめたような声の出しかた、それを切って捨てる太鼓、その緊張のすべてが、世阿弥の創りだした能の世界である。武士の趣味にかなうように、限りない哀感をもってひえびえとした美しさを編みだしているのは、次から次に切り捨てていく時間の構造を実に立派に、弁証法的美の構造につくりあげているのである。