轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页
おしのは足のほうから震えだし、息が詰まりそうになった。声が出ないので、徳次郎に眼で頷き、茶の間へいって塩のぬるま湯を作った。喀血したらそうするようにと、まえに医者から聞いていたのである。おしのは自分をおちつけるために、水を一杯ゆっくりと飲み、それからまた店へ出ていった。喜兵衛は眼をあいて、はいって来るおしのをみつめた。
「塩湯よ」とおしのは微笑しながら坐った、「濃すぎたら薄くしますわ」
「起きなくってもいいのに」
「口をきいてはだめ」とおしのが云った、「そうっと頭だけあげてね、徳どんと忠どん、うしろからそっと支えてちょうだい」
二人がうしろから抱き起こすようにし、おしのは父に塩湯を飲ませた。暫くは動かせないので、汚れた着物もそのまま、枕をさせ掻巻を掛けてから、湯で手拭を絞って、胸元から口のまわりを拭いた。
「胸がおちつかない」と喜兵衛が云った、「手拭で冷やして当ててくれ」
「ごめんなさい」とおしのはすぐに立った、「それをすっかり忘れてたわ」
「おまえたちはいい」喜兵衛は店の者に向かって云った、「もうおそいから、片づけるのは明日にしてみんな寝てくれ」
「横山さんを呼んで来ましょう」