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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页
「間違いはないな」
「慥かですとも、あのときのおりうという女に間違いはありません、あたしは証人になってもようございます」
「よし」千之助は頷いて云った、「ちょっとこのうちの主人を呼んでくれ」
おはなは立ってゆき、すぐに五十ばかりの男を伴れて戻った。彼はこの「かね本」のあるじで、名は与助であると云った。
「おれは八丁堀の青木千之助という者だ」
与助は辞儀をして、「御苦労さまでございます」と云った。
「上総屋の七造から知らせがあったのでとんで来たんだが、あらましのことはそのほうも聞いているだろう」
「はい、お新と二人から聞きましたので、すぐ上総屋の親分へお知らせにあがりました」
「考えることがあって、この件はおれが係を買って出た」と千之助は云った、「市中の目明しにはぜんぶ通知したから、今日までに三度、それらしい女をみつけたと云って来た、しかし三度ともまるで人違いだった」
「あたしは人違いなんかしやあしません」とおはなが口をはさんだ、「あたしはこの眼でちゃんと」
「少し黙ってくれ」と制して、千之助はあとを続けた、「そういうわけで、人相風態だけが頼りだから、もしお新の云うことが」