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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页
「そら白状した」と小稲と呼ばれる芸妓が云った、「きっとなかの梅次姐さんよ」
「やかましい、私は仲人役だ」と清一が遮った、「濡衣はつまらないから云っちまうが、本当はこの米八にいいのができて」
「ちょちょ、ちょっとお待ち」米八は片手でなにかを押えるような動作をした、「ものには云っていいことと悪いことがありやす、そういうあなた、男と男が血を啜りあって誓った秘密を、取るにも足らぬ女わらべの前で披露するということはござんすまい」
「ひと聞きの悪いことを云うな、私が米八なんぞと血を啜りあうか」と清一が云った、「こいつに惚れるとはよっぽどの悪食らしい、ともかくどこかで逢曳きということになったが、師匠がかりの身で自由がきかない、どうか若旦那のおなさけでと、――こいつが両手を合わせて泣くという始末さ」
「米八さんのことなんかようござんすよ」と年増芸妓の一人が云った、「そのお嬢さんと馴れそめの幕をあけて下さいな、ねえ」
そうよそうよと他の芸妓たちが云った。
「では柝を入れて」と清一は云って、一と口飲んだ、「こいつとその婦人をしけこませてから、私は女中を相手に飲んでいた、するとおかみがあらわれて、あちらのお客さまが一と口差上げたいと仰しゃっていますが、と云うんだ、知らない客とはいやだと云うと、おきれいなお嬢さまだけれど、それなら断わり