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ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页

青空文庫

「話が途中だ、あとを聞かなくってもいいのか」

「うかがいますとも」菊弥が気のない調子で熱心そうに云った、「そういう話を途中でやめるなんて罪よ、ねえ」

「そうですとも、ぜひうかがいたいわ」と吉奴が云った。

松次が三味線を置き、おまさと米八が戻って来、そこへ女中が酒と肴を持って来た。

清一は飲みながら話し続けた。聞いている六人は明らかに興ざめたようすで、酌をしたり肴を取り分けたりする手つきも、うわのそらのようにみえた。清一はいまの騒ぎでしらけた気分を、自分からほぐすつもりで話を続けたのであるが、「小若は死ぬだろう」という叫びも、彼にはそれほど気にならなかったものか、まもなくすっかり調子づいて、その話しぶりもますます熱を帯びるばかりだった。

「その娘はお倫といって、年は十七か八だろう」と彼は上唇を舐めた、「いかにも箱入り娘らしくて、縹緻もいいが、躯つきや身ごなし、ものの云いようにこぼれるような、色気と、おっとりと匂うような品があった」

清一は浅草瓦町の横町に自分の家を持ち、ばあやと二人でくらしていた。

道楽が過ぎて七年まえに勘当され、香屋へは出入りも止められていたが、母親から呉れる毎月の生活費は余るくらいあった。