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ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页

青空文庫

「わたしもばかだったんです」おつるは鼻の詰まった声で云った、「でもどうしてでしょう、こんなときになると女は、みんな同じようなことを云いますわね、しょせんあたしがばかだったって、……おかしなものですよね」

おつるはそのとき十五歳だったという。常陸のくにのなんとかいう山里から奉公に来て、半年と経たないうちに、女中部屋へ忍びこまれた。その部屋にはほかに三人、飯炊きの女と下女と、小間使が寝ていた。騒げば難はのがれたであろうのに、その三人に気づかれては大変なことになる、という気がして、声も出なかったし暴れもしなかった。

田舎で十五まで育ったのだから、情事についてはかなり詳しく知っていた。もちろん見たり聞いたりしただけで、具体的な経験もなし、躯もまだ女にはなっていなかったが、これがあのことだと思い、幸不幸の分れめだと思った。

――田舎ではそうなのだ。

一度でもそういうことがあれば、二人は夫婦になるときまっていたし、男にその気がなくって、いたずらにされたのだとすると、女は泣かなければならないのだ。

三

常陸は気の強いおくにぶりだという。そうばかりともいえないが、おつるは気の強いほうであった。