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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页
知らねえと云ったって立派にとおる筈だ」
「そうかしら」
「そうかしらって、――現におめえが、自分一人でやったことを知ってるじゃねえか」
「あたしの云うのはそうじゃないの」とおしのは穏やかな口ぶりで云った、「あんたは金で買われてあたしの手伝いをしただけだ、って云ったでしょ、自分では一度も手出しはしなかったって」
「そうでねえとでも云うのかい」
「そうでないと思ってるの」おしのは沈んだ眼つきで彼を見た、「あんたはあたしの手伝いをしただけではなく、おっ母さんの手伝いもしたわ、おっ母さんばかりじゃなく、よその後家さんやおかみさん、浮気な娘たちまで、何十人となく芸人や役者衆をとりもって来たわ、そうじゃなくって、佐吉さん」
「ちょっと待ってくれ」彼は頭を振り、片手で横額をとんとんと叩いた、「話がへんにこんがらかってきやがったが、そいつはいってえ、どういうことなんだ」
「あんたのために、何十人もの女のひとや、その人の縁者や家族の人たちが、おちぶれたり一家ばらばらになったりして、どのくらい不仕合せになり、泣いているかもしれないわ、あたしのおっ母さんがいい証拠だとは思わない、佐吉さん」