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ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页

青空文庫

五

「それよりも、殺された四人のことが気にならないかしら」

「どういうわけで」

「四人ともおそのさんとわけがあったということは話したでしょ、殺し方も同じ、枕許に山椿の花片、――」とおしのは暗示するように云った、「山椿は父親という人の好きな花だったんです、なんのたのしみも道楽もなかったその人の、たった一つだけ好きな花だったんです、だからその花片は、父親へ供養のしるしとして置かれたものなんです」

「と云うと、四人を殺したのは」と云いかけて、彼は強く頭を左右に振った、「いやばかな、まさかそんな」

「そうなんです、四人ともおしのが殺したんです」

おしのはそう云うと、長襦袢の左の袂をさぐり、銀の平打の釵と、平たくたたんだ紙包みを出し、包みをひらいて、その中に赤い椿の花片が一枚あるのを見せた。

源次郎はうしろざまに反って、両手で上躰を支えた。顔は壁土色に硬ばり、大きくみひらいた眼は、いまにもとびだすかと思われた。

おしのはもういちど、長襦袢の衿を左右へひらき、あらわな胸を彼に見せた。

「さあどうぞ」とおしのは云った、「どうぞ触って下さい、あたしがおしの、あなたの娘です、抱いて寝て下さるんでしょう」