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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

(護送の刑事諸君がドジを踏んだのさ。日本の警察は猛獣の捕物には慣れていないからね。お蔭で僕はとんだ目にあうところだったぜ。君はなかなか頭もいいとみえるね。それとも親父さんの方かい)

「ウフフフ……とっさのあいだに、すっかりおれたちの陰謀を悟ってしまったね。偉いよ。だが、よく生きていられたねえ。芝浦でひどい目にあわなかったかい」

(ひどい目にあったのは、どっかのルンペンだったよ。僕はそれを見物しただけさ。ハハハハハ)

「すると、君の方もウマく逃亡したんだねえ。お互いに無事でよかったねえ、ウフ、ウフ、ウフ、ウフ」

そして、この稀代の殺人鬼と名探偵とは、電話口に声を揃えて、さも面白そうに笑い合うのであった。

「電話をかけてくるところを見ると、君は遠方だね。芝浦付近だろう」

人間豹は赤いヌメヌメした唇を意地わるくヒン曲げて、一種異様のアクセントでからかった。

(そうだよ。芝浦の公衆電話だよ)

「ウフフフフ……おれは実に愉快だぜ、探偵さん……君は今イライラして、額から脂汗を流しているねえ。見えるようだぜ……そこで円タクを拾って、いくら急がせてみたって、ここまで二十分はかかるね。