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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

君も話を聞いているだろうが、僕は今夜、文代の身代り人形を使った。着物からなにからすっかり同じ人形なんだ。そいつがころがっているとしか考えられなかったのだよ。なぜって、本物の文代は恩田が人形の箱へ入れて連れて行ったのだからね。しかし、小林君のこの様子では、あれはやっぱり人形じゃない。ね、そうだろう」

少年を顧みると、彼はニコニコしながら、ガクンガクンと大きくうなずいて見せた。

はてな、もしそうだとすると、どうも辻褄が合わなくなるぞ。恩田は確かに文代さんを人形箱へ入れたではないか。それをトラックに積んで運び去ったではないか。しかも、九段の濠端で、その文代さんを、あのむごたらしい目にあわせたではないか。もう文代さんは五体所を異にして最期をとげてしまったのだ。その人が今、明智邸の台所に寝ているなんて、まるで狐につままれたような話ではないか。

だが、そこにころがっていたのは、やっぱり人形ではなかった。何がどうあろうとも、本物の文代さんであった。まだ気を失っていたけれど、調理台の下から顔を引き出して調べるまでもなく、からだにさわってみれば、人形か人形ではないかは、たちまちわかることであった。