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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

少年が林檎のような頬をかがやかせて、にこやかに説明した。

「だが待ちたまえ。むろん君もあいつに麻酔剤を嗅がされたんだろう。でなければ、あいつがそんな油断をするはずはないからね」

「ええ、ですけど、僕、息が強いんです。一所懸命になれば、二分以上息をつめていても平気なんです。いつも先生に、それを利用することを忘れるなって教えられていたもんですから、ガーゼで鼻と口をふさがれても、じっと息をつめて、気を失ったまねをしてやったんです」

さすがの恩田もこの可憐な少年に、そんな大それた隠し芸があろうとは知らぬものだから、グッタリとなったのを見て、安心しきってしまったものであろう。

「へえ、君がねえ。驚いたもんだな……ハハア、これだね、明智君、さいぜん君が謎みたいなことを言っていたのは」

「そうだよ。僕の勝敗はただその一点にかかっていたのだよ……だが、小林君、君はもう一つのことを忘れやしなかっただろうね。ほら、昼間は白、夜は黒のアレを」

「ええ、うまく仕掛けました。むろん黒の方です。運転台にいた手下のやつが、なんだか怪しんでいたようですが、あの仕掛けには気づかなかったらしいです」