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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
二日目には、恒川警部の発案になる、奇妙なポスターが浅草界隈の辻々に、ベタベタと貼り出された。ポスターのまん中には画家に描かせた人間豹恩田の似顔が、実物の二倍の大きさで印刷してある。その下に「これは近頃世間を騒がせている殺人犯人恩田の似顔です。こういう人物を発見されたかたは猶予なくもよりの交番へ知らせてください」とわかりやすい文章で振り仮名つきでしるしてあるのだ。その似顔絵は、かつて大都劇場で人間豹の形相を目撃した一洋画家が、明智夫妻の口添えで描いたものであったが、非常に特徴のある獣人の似顔は、記憶によって充分に表現することができたのである。
警察としては実に思い切ったこのポスター戦術は、辻々に人の黒山を築いた。恐怖におびえた眼が醜悪な似顔絵に集中された。人間豹に関する恐ろしい噂話は、輪に輪をかけて、大衆のあいだに流布されていた。
「ワア、すげえ。こいつの眼は、暗いところでもまっ青に光るんだってよ」
「牙があるぜ」
「ほんとだ。牙がありゃがる。犬でもなんでもモリモリ食っちまうってじゃねえか」
「違うよ、犬じゃねえ。人間の女を食うんだよ」
「いやなものを見ますね。