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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
「僕が一度その家をしらべてあげよう。もし怪しいやつだったらすぐ警察に引き渡すし、そうでなかったら君のうちに迷惑のかからぬように、僕がうまくしてあげるから。どうだね。そこへ案内してくれないだろうか」
明智が説き聞かせると、おかみさんはすぐさま承知して先に立った。そして家主にも諒解を得てもらった上、問題の借家の台所口につくと、おかみさんを帰して、明智はただ一人、相手に悟られぬよう注意に注意して、ソッと屋内に忍びこんで行った。
家の中はガランとして道具も人気もなかった。音を立てぬように階下を調べ終ると、次には二階であった。おかみさんの話にもあったとおり、怪しい男は二階に住んでいるらしいのだ。
明智は変装などする場合には、殊さら探偵七ツ道具を忘れなかった。小型ピストルもそのうちの一つである。彼はポケットの中でそのピストルを握りしめながら、ヤワな段梯子を少しも音を立てないように、カタツムリみたいな速度でのぼって行った。
だが、そうして長い時間を費やして、やっと階段の上に首を突き出してみると、案外なことには、二階も同じようにガランとして、いっこう人のいるけはいがしない。