轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
「おお、おれはマッチを持っていた。ここにマッチがある」
彼はそれをポケットから取り出して、軸木の数を調べた上、その一本をシュッとすった。たちまち闇を破る赤い光。その光で、密室の隅から隅を見まわしているあいだに、彼の考えはますます熟して行った。
「そうだ、そのほかに方法はない。一か八かやっつけてみるのだ」
彼は大急ぎで服を脱ぎはじめた。そしてまっぱだかになると、シャツ、猿股、ワイシャツ、ネクタイ、ソフトカラアなど薄手のものばかり選り出して一とまとめにし、再び素肌に背広を着、オーバーをまとった。それからポケットというポケットをさぐって、ハンカチ、古手紙、鼻紙、手帳の類に至るまで、燃え易いもの一切を集めて、シャツなどの布類と一緒にし、それを丸めて部屋の奥の板壁のきわに置いた。
彼はそれに火をつけようというのだ。では彼は悪魔の巣窟を焼き払うつもりなのだろうか。だが、そんなことをすれば、誰れよりも先に神谷自身が焼け死んでしまうではないか。なんという無謀なことを企てたものであろう。彼は引きつづく激情に、気でも狂ったのではあるまいか。
いや、そうではない。彼は一つの冒険を思い立ったのだ。