轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
闇にうごめく
神谷は猫を飼ったことがあるので、そういう舌の恐ろしさをよく知っていた。兇暴な肉食獣の舌、猫か虎か、でなければ豹の舌だ。
巨大な両眼に燃える蛍光といい、黒ずんだ骨ばった顔といい、まっ赤な猫舌といい、敏捷な身のこなしといい、黒い豹! そうだ、この男を見ていると、熱帯のジャングルに棲む、あの孤独で兇暴な陰獣を、まざまざと連想しないではいられぬのだ。
おれは果たして正気なのだろうか。この怪物は酔眼をまどわす幻影なのではあるまいか。それともおれは今、悪夢にうなされているのかしら。
神谷は見ているのも恐ろしくなって、眼をそらそうとしたが、そらそうとすればするほど、かえって、眼に見えぬ糸で引き戻されるように、いつの間にか、相手のけだもののような口辺を凝視しているのであった。
闇にうごめく
恋人を保護したいばかりに、恐ろしい思いをこらえこらえて、怪物と同じボックスに対座していたあいだが、どんなに長く感じられたことか。だが、恩田はやっぱり、時々ギリギリと歯を噛み鳴らしてはいたけれど、これという兇暴なふるまいもせず、一時頃まで、弘子の顔に見とれながら、飲んだりたべたりしていたが、もう看板だからと断られると、さも残り惜しそうにして、弘子に繰り返し繰り返しサヨナラを言って、案外おとなしく立ち去った。