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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

菊太郎君は辛抱がよかった。一生の運試めしと思うから、なんとかしてトン/\ぐらいに仕上げたい。側で見ていると、岡目八目でよく分る。見す/\いけないものを頑張っている。曲るという言葉があるが、本当に頭が曲ってしまうのだ。しかし一週間後に精も根も尽きて投げ出した。

「どうだい? 初陣の功名は」

と僕は冷かしてやった。

「大きかったよ」

「幾らやられたんだい?」

「四百円足らずだ。一時はもっと行くところだったけれど、直観が動いたから、辛抱がつゞいたんだよ。しかしもう懲りた」

「家の首尾は?」

「迚も悪いんだ」

「乗り込もうか?」

「当分いけない」

と菊太郎君は元気がなかった。

僕が菊太郎君のお父さんの面前に現れたのはそれから半月ばかり後だった。

「実は菊太郎君のことにつきまして、折り入ってお願いに上りました」

と改まったら、市※さんは腕組をして小首を傾げた。

「又やったんですか?」

「いや、その方じゃございません」

「それじゃ何をやったんですか?」

と与太息子を持った親父は気の毒なものだ。どうせ何か仕出来すと常住覚悟をしているのらしい。

「実は御縁談です」

「はゝあ」

「実は菊太郎君には貰いたい人があるんですけれど、事情が事情ですから、御自分では申上げられないんです」